核分裂の研究が公開されなくなるまでの経緯

核分裂が発見されるとほどなくして,米国や英国の科学者たちはナチス・ドイツによりそれが軍事利用されることを危惧して,核分裂に関する新たな研究成果を秘匿するようになる.研究の成果は広く公開するという原則で行動してきた科学者たちのあいだで,「研究成果の秘匿」がどのように進められていったのか,その経緯を,同時代の物理学者L.シラードの証言や,物理学史家 S.Weart の研究などをもとにまとめてみよう.(「研究成果の悪用を防ぐためには,ときに公表を制限することも必要だ」という主張の有効性を検証することにも役立つであろう.)