中谷宇吉郎

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『雪』をめぐるエピソード

中谷宇吉郎著『雪』(岩波書店) 岩波新書の『雪』は、中谷宇吉郎の数多くの著作のなかで最もよく知られたものであろう。この『雪』に関し、中谷の高弟でもある樋口敬二氏が、「中谷宇吉郎小伝」のなかで興味深い事実を指摘しておられる(注1)。 「『雪』の初版が1938年7月に出た時に、雪の結晶の研究史についての記載には加納一郎著『氷と雪』(梓書房、1929)からの引用が多いのに、その出典が明記されていないので...
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マッキンノン嬢

中谷宇吉郎は1949年に3カ月間アメリカ各地を旅した折、カリフォルニア大学バークレー校の東亜図書館で主任ハッフ(Elizabeth Huff)博士の「助手のやうな仕事をしてゐる」エリザベス・マッキンノンの自宅を訪れ、東亜図書館も見学させてもらった(注1)。「マッキンノン嬢は、札幌のミッションスクールである北星女学校の先生を以前してゐて、戦前私の家の向ひに住んでゐたので、その頃から知り合ひ」だった(...
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中谷宇吉郎の自宅

1939年、伊豆の伊東での療養生活を終えた中谷宇吉郎は、札幌に自宅を建て、そこに移り住んだ。中谷はその経緯について、随筆にこう書いている(注1)。 いよいよ[家族の]皆が丈夫になったので、伊豆の寓居を引き払って札幌へ帰ろうとしてみたら、北海道の資源開発に関係した殷賑産業のあおりを喰って、借家というものがまるで無くなっていることがわかったのである。半年もかかって探しても適当な家が見付からないので、仕...
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石黒資料

前回の記事「ボーデン社を訪れた背景」で、中谷宇吉郎が石黒忠篤に宛てて書いた書簡に言及した。この書簡を含む「石黒資料」について記しておこう。拙著『中谷宇吉郎 人の役に立つ研究をせよ』(ミネルヴァ書房)のp.324で<石黒資料>と表記したものである。 戦前から敗戦直後にかけ農林官僚・政治家として活躍した石黒忠篤(1884-1960)は、1942年8月に半官半民の組織として東亜農業研究所を設立し、その理...
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ボーデン社を訪れた背景

中谷宇吉郎は、1949年に3ヶ月ほどアメリカを訪れたとき、有名な乳業会社ボーデンの工場を視察し、そのときの感想を随筆「シカゴの牛乳会社」に書いている(注1)。雪氷科学者たちと交流するために渡米した中谷が、なぜ乳業会社を訪れたのだろうか。 …多量に消費されるアメリカの牛乳の生産法を、一度見ておきたいと思つて、シカゴのボルデンといふ有名な牛乳会社の工場を見せて貰つた。 随筆「シカゴの牛乳会社」では、こ...
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国葬日に地鎮祭とは

『中谷宇吉郎』(ミネルヴァ書房刊)の77頁に記したことであるが、中谷は1943年春からニセコアンヌプリ山頂に着氷観測所の建設を開始し、6月5日に頂上で地鎮祭を行なう。この日はちょうど、山本五十六の国葬日だった。 しかも中谷たちは、この日、単に地鎮祭を執り行なうだけでなく、アンヌプリへの入口にある青山温泉に「関係者一同」を招待している。皆、たいへん喜んでくれ、観測所の建設に協力してくれるというので安...
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改訂版

7月1日に公開した「人物紹介」を増訂した第2版を、きょう7月14日に公開しました。 変更点は以下の通りです。 ● 以下の人物(24名)について、新たに記述を加えました。 安藤新六、緒明亮乍、大来佐武郎、大村卓一、岡潔、小川清、小川新市、小熊捍、小口八郎、オシュガー、オッペンハイマー、オブライエン、ウィルソン、宇田道隆、内田俊一、クラウス、クラップ長官、クリスティー、鈴木桃太郎、高木玉吉、寺田甚吉、...
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「人物紹介」

評伝『中谷宇吉郎 人の役に立つ研究をせよ』(ミネルヴァ書房)に名前が出てくる人たちについての「人物紹介」です。ダウンロードもできます。