『醤油の話』

家庭社が1930年に発行した『醤油の話』は、大きさが縦16cm、横11cmほど、全頁数70頁あまりの小さな冊子である。

『醤油の話』家庭社、1930年
(北海道立図書館蔵)

最初の50頁ほどは福山甚三郎による「醤油の話」で、末尾には神尾三休(本名、神尾正)による「醤油小話」が添えられている。

それにつづいて次の3話が、附録として収録されている。
 福山甚三郎「守愚の訓」
 小佐部藤次郎「苔のむすまで」
 福山甚之助「堅忍協力」

小佐部藤次郎は、先代の福山甚三郎の二男(甚作のち甚三郎の弟、甚之助の兄)である。福山醸造株式会社の『百年の歩み』は藤次郎について、次のように記している(以下は要旨)。

 先代の甚三郎の弟甚太郎が福井県で小佐部家を相続したのだが後継ぎがないうちに夭逝したため、藤次郎が幼いころに小佐部家を継いだ。とはいえ藤次郎は札幌の生家で暮らしていた。
 そして小佐部藤次郎が1912年、旭川に工場を設立して、味噌の製造に着手した。だが藤次郎の健康が思わしくなかったため数年で閉鎖する。
 その後1918年に福山商店が苗穂町37番地に第2工場を建設すると、藤次郎が病魔と闘いながらこの工事を監督し、生産開始後も責任者として昭和の初めまで工場監督を務めた。

甚三郎の「守愚の訓」は、先代の甚三郎の遺訓について述べたもの、甚之助の「堅忍協力」は、『福山甚之助と新聞「家庭」』の第7章第4節に一部を引用した、勤続者表彰式(1930年1月6日)での挨拶の全文である。

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参考文献
福山醸造株式会社企画部・創業百年記念誌編集委員会『百年の歩み』株式会社福山倉庫・福山醸造株式会社、1991年