個人向けデジタル化資料送信サービス 利用した感想

国立国会図書館で「個人向けデジタル化資料送信サービス」が5月19日より始まった。同図書館がデジタル化した資料のうち、大学図書館や公立図書館などに出向けば閲覧できたものが、自宅でも(個人でも)閲覧できるようになったのだ。さっそく、前々から見たいと思っていた『山峨女史家族制限法批判』(1922年)など何冊かを閲覧してみた。

これまでも、大学図書館に行けば、そこに設置されたパソコンで閲覧できた。だが、図書館のパソコンを長い時間一人で占有するのは気が引けるし、人が行き交う環境下では落ちついて読むのも難しい。それに引き換え今回のサービスを使えば、自宅で、珈琲など飲みながらゆっくり閲覧できるのだから、「読書」の質が上がる。

それに、同じパソコンでメモを取ることだってできる。自分のパソコンなのだから、日本語変換辞書も自分のもの、したがってメモ書きの効率がぜんぜん違う。

さらにiPadなどタブレット端末を使うと、寝床の中でも読むことができる。これは最高に有り難い。メモを取るのは難しいが、画面キャプチャーである程度まで代替することもできる(本文を自己利用の範囲内で複製することは著作権法で認められている)。

このように、今回のサービス開始は、近代日本の古書を読むことの多いものにとって朗報だ。

ただ、気になった点もいくつかある。

  • 「デジタル化資料送信サービス」のログイン画面はこれなのだが、ここに行くリンクが何処にあるのか、わかりにくい。(今年の12月からは国立国会図書館オンラインへのログインと統一(一体化)されるようだから、いくぶん改善されるかもしれない。)
  • ログアウトの仕方がわからない。利用終了後にブラウザを閉じればいいとのことだが、ログアウトできず不安になる。(何も操作せずに30分経過すると自動的にログアウトするとのこと。)
  • プリントアウトできない。もっとも、表示画面のスクリーンショットを撮ることで、面倒だがある程度は代替できる。プリントアウト機能についてはシステム改修などを進めており、2023年1月の提供開始を目指しているとのこと。
  • タブレット端末で、ピンチアウト/ピンチインによる画像の拡大/縮小ができない(ビューアの拡大/縮小ボタンを使えばできる)。「今後対応予定」とのことだが、時期は不明。
  • 海外在住者は利用できない。現地の法律に基づいて適法性を確認するのが困難なためとのことだが、もし解決されれば海外在住の研究者にとっても朗報だろう。