『「軍事研究」の戦後史』への、訂正と補足 

拙著『「軍事研究」の戦後史』の読者の方から、第5章の参考文献の一部に誤りがあるとの指摘を頂いた。確認したところ、たしかに誤りがあり、また追加もしたほうがよいと考えたので、次のように訂正したい。p.190(の後ろから2行目)から p.192 の箇所である。

本文

これに対し、研究チームのリーダーであり論文の筆頭著者でもある河岡は、こう反論した(17a)。悪用のリスクを…
米厚生省の勧告に法的拘束力があるわけではなかった。しかし河岡を含むインフルエンザ研究者たちは、翌年の1月20日、60日間の研究モラトリアムを宣言した(17b)。NSABBが、かつての…モラトリアムを提言していた(17c)、それに応えたのである(18)。

河岡らの論文は、5月にオンラインで、6月に雑誌上で公開された。他方、フーシエらの論文も6月に『サイエンス』誌上に掲載された(20)。

17a) Kawaoka, Y., “H5N1: Flu transmission work is urgent”, Nature, 482, 155 (09 February 2012; published online 25 January 2012).

17b) Fouchier, R. Garcia-Sastre, A., Kawaoka, Y. et al., “Pause on Avian Flu Transmission Research”, Science, 335(6067), 400 (27 Jan 2012).

17c) NIH, “NIH Statement on H5N1”, January 19, 2012, https://www.nih.gov/about-nih/who-we-are/nih-director/statements/nih-statement-h5n1.

20) M. Imai et al., “Flu transmission work is urgent”, Nature, 482(9 February 2012), 155. S. Herfst et al., ….
取り消し線の箇所を、以下に差し替え “Experimental adaptation of an influenza H5 HA confers respiratory droplet transmission to a reassortant H5 HA/H1N1 virus in ferrets”, Nature, 486 (21 June 2012), 420.

ご指摘下さった読者の方にお礼を申し上げたい。

これとは別に、自分で気づいていた誤りもあるので、この機会にあわせて訂正したい。

p.21, うしろから8行目 学士院会館の講堂 → 日本学士院に隣接する科学博物館の講堂

p.39, うしろから6行目 「形式、内容ともにそなわった「軍事研究」にほかならない → 「形式、内容ともにそなわった「軍事研究」」にほかならない

p.152, 5行目 流行を抑え込むことに → 抑え込むことに (「流行を」を削除)

p.203, うしろから8行目 ジェイコブソン → ジェイコブセン

p.247, 5行目 国防省 → 国防総省

p.274, 注26, 28, 30/ p.280, 注30/ p.284, 注24 A. Jacobson → A. Jacobsen

索引のp.2 ジェイコブソン(Jacobson, Annie)→ ジェイコブセン(Jacobsen, Annie)

なお、本書で参照した Jacobsen の著書 Pentagon’s Brain は、その後 太田出版から邦訳が出た。『ペンタゴンの頭脳 世界を動かす軍事科学機関DARPA』(加藤万里子訳)。また、原著の注を邦訳したものが、出版社のウエブサイトに公開されている。

最後に、もう一つ追記。

周知のように、2017年3月に日本学術会議が、軍事研究に関する新たな声明を出した。そこで、拙著での歴史的な考察を踏まえて、その声明について検討した文章「日本学術会議の「2017年声明」を考える:歴史的視点から」を書いた。拙著へのいわば追記である。
以下のサイトからダウンロードできるので、参照いただければ幸いである。