防衛省(防衛庁)は、毎年度どのくらいの予算を軍事研究に費やしているのだろうか。防衛省(防衛庁)の予算で「研究開発費」として括られている金額が一つの目安になるだろう(注1)。
というわけで、その金額の変化をグラフにしてみた。赤の縦棒が研究開発費の総額(右の軸、単位は億円)で、紫の折線グラフ(左の軸)は、防衛予算全体に占める研究開発費の割合(%)である(右端の2017年度は、概算要求の金額にもとづく)(注2)。
これを見ると、1970年代には研究開発にあまり重きが置かれていなかったが、80年代に入った頃から情況が変わりはじめたようである。1980年度後半から、研究開発費の額も、防衛予算に占める割合も急速に増大し、1997年度には1605億円(3.2%)にまで達する。その後は、1000億円弱と1700億円余りの間で増減を繰り返している。2011年度と2012年度に大きく落ち込んでいるのは、東日本大震災の影響であろう。2001年度から2017年度までの平均をとると、1371億円(2.8%)である。
防衛装備庁(防衛省の外局)は、2017年度の概算要求に「安全保障技術研究推進制度」の予算として110億円を盛り込んでいる。2015年度は3億円、2016年度は6億円だったから、たしかに「急増」である。また、これまで「軍事研究をしない」と宣言してきた大学の研究者たちも、その制度による研究費に応募できる。これらは、たしかに重要な論点ではある。
しかし「軍事研究をしない」という科学者の宣言が、「科学研究の成果を戦争目的に使わせない」という思いに発するものだったとすれば、「安全保障技術研究推進制度」の10倍以上の金額を投入して推進されている研究も、当然、論議の対象とされるべきように思われる。
注1) 杉山滋郎『「軍事研究」の戦後史』p.114 では、防衛省技術研究本部の予算の推移に触れておいた。典拠にした『技術研究本部50年史』には、2001年度までのデータが収録されている。
注2) 『防衛白書』等に掲載の防衛省予算、および「防衛省所管 平成29年度歳出概算予算書」による。