研究で得た賞金を生活費に ― 牧野佐二郎

牧野佐二郎は、1942年に雑誌『キトロギア』に発表した論文(体細胞に染色体対合を誘発できたという実験を報告したもの(注1))で、賞金をもらった。その使い道について、牧野は1970年にこう書いている。

月給85円の時代に200円の賞金は目のとび出るものであり、貧乏暮しで子供を育てていた家内と2人、ありがたくいろいろなものを買わせていただいたが、そのとき求めた25円の英国製ベロアの帽子はいまでも冬になると大切にかぶっている(注2)。

今日であれば、大学での研究で得た賞金などは大学に納入すべきだが、当時はこんなふうに自由に使うことができたという一事例である。


注1) Sajiro Makino, “Artificial Induction of Meitic Chromosome Pairing in the Somatic Cell of Drosophila virilis”, Cytologia, 12(1942), pp.179-186.
注2) 牧野佐二郎「研究中の“不意の出来事”」『蟻塔』16(10)、1970年、p.3.