もと宣教師館

札幌市中央区にある北星学園女子中学高等学校、その敷地内にグリーンの屋根と芥子色の壁をもつ洋風建物がある。1926年に建てられた、同校の前身・北星女学校の宣教師館(宣教師のための宿舎)で、今は北星学園創立百周年記念館として保存・公開されている。(国の登録有形文化財に指定され、札幌市都市景観賞に選定されてもいる)

北星学園創立百周年記念館(もと宣教師館)

設計者は、スイスの建築家マックス・ヒンデル(1887-1963)である。彼は1924年から3年ほど札幌に住み(注1)、この宣教師館のほか、同校の寄宿舎、藤高等女学校の校舎、北大スキー部のパラダイス・ヒュッテ、北大山岳部のヘルヴェチア・ヒュッテ、函館のトラピスチヌ修道院などを設計した。

北海道帝国大学医学部の教授、柳壮一や、山崎春雄(山岳部)、大野精七(スキー部)らの住宅も設計した。「イチイなどの丸太杭9尺程度のものを10何本も地面に打ち込むといった慎重な構造的配慮や、外壁をこけら葺や亜鉛鉄板張りにするなどの処理、日本独自の引き戸や引き窓の採用などが共通した特徴であった」という(注2)。

北星女学校の宣教師館でも、スイス豪雪地帯の住宅を範に、急勾配の屋根に、防寒処理を施した外壁、採光のため南側に大きな窓を配置する一方で、窓台に勾配をつけ溝穴も掘って雨水が室内に入らないようにするなど、和風建築の良さを活かしつつ細やかな配慮を加えている(注3)。


注1)スイス人のヒンデルが1924年に来日し、はるばる札幌までやってきたのは、義弟ハンス・コーラーの勧めがあったからである。コーラーは北海道帝国大学予科でドイツ語の教師をしていた。
注2)角幸広、越野武「建築家マックス・ヒンデルMAX HINDERの経歴について」『北海道大学工学部研究報告』83(1977)、pp.15-24
注3)「北星学園創立百周年記念館」パンフレット
注4)1963年12月4日に火災で焼失。